
前回からはIPでのプレイについての解説しています。IPにいるときはレイズするよりもコールに留めた方が良いことが多いことを学びました。ジャストコールすることでスタックをディープに保ち、ターンとリバーでの戦略の選択肢を広げることができるのです。
プレイヤータイプに合わせてプレイする
もう1つ、IPからのドローのプレイについて私が皆さんにお話ししたいのは、ドローでセミブラフのベットまたはレイズをする前に相手がどんなプレイヤーなのかをよく考えよ、ということです。相手のプレイヤータイプはアクションを決定する上で重要な考慮要素なのです。
例えばプリフロップでレイズインして、ルースで非常にアグレッシブなプレイヤーがBBから3ベットしてきました。このプレイヤーが3ベットをするのはこのセッションではじめてだったので、このプレイヤーの3ベットレンジをAA-JJ, AKsだと見積もりました。フロップではローカードが3枚落ちて、何かしらのドローができたとします。
ここで、相手がベットしてきました。このプレイヤーが相手ではフォールドエクイティはないに等しいのでここではレイズすべきではありません!ルースなプレイヤーはAA-JJをローボードでフォールドするようなことはしません。AKsすらコールしてくるでしょう。ここはドローを完成させなくてはならないのです。こんなときはポットオッズとインプライドオッズに従ってオールドスクールなプレイを心がけましょう。
最近のプレイヤーは、フラッシュドローをフロップでは滅多にフォールドしないようです。しかし、今回のような状況では、インプライドオッズが合わないのであればシンプルにフォールドするのが良いでしょう。このハンドで負けたとしても、相手プレイヤーからはすぐにチップを引き出せるはずですので心配いりません。忍耐は美徳なり(※ 英語のことわざ:Patience is a virtue. )。私の母の口癖です!
トーナメント特有のプレイ
続いてはトーナメント特有のプレイについてお話しします。トーナメントにおいては、OOPにいることがかえって有利になることがあるのです!どういうことでしょうか。普段からMTTをプレイしている方にはお分りいただけるかも知れませんが、OOPにいることでIPのプレイヤーよりも各ストリートで先にオールインする機会があるのです。身に覚えはありませんか?
トーナメントも終盤に差し掛かった頃、スタックもだんだんとショートになってきました。そんな時にフロップでストレートドローを広いオールインする準備をしていたら... 相手に先にオールインされてしまった!ストレートドローでオールインするのは良いプレイですが、オールインにコールすることはできません。こんな風に計画を台無しにされたことはありませんか?
このような状況を説明するために、ダン・ハリントンは次の表現を発明しました。
最初にアクションできることの価値が、インポジションの価値を上回った。
IPのプレイヤーは(例えばドローを持っていて)オールインしたかったのですが、相手に先にオールインをされてしまうとフォールドせざるをえなくなります。コールすればスタックを全て失うことにもなりかねませんし、そうでなくてもお互いにとってもコールしないほうが良いでしょう。トーナメントでは大きな戦いは避けるべきなのです。
なぜトーナメントでは大きな戦いを避けるべきなのかについては、私とクィ・グウェンの共著『 From Vietnam to Vegas; How I Won the WSOP Main Event(D&B Publishing;日本語未訳)』のICMの章で詳しく説明していますのでぜひそちらもご覧ください。
先延ばしにしない
トーナメントの終盤では、ポジション以外にも多くの要素が絡んでくるため、ドローをインポジションでプレイできることはそれほど大きなメリットではないのです。ドローを持っていてオールイン可能なスタックサイズになったら、ポジションがあるからといってオールインする機会を先延ばしにすべきではありません。相手に先にオールインする機会を与えないようにしましょう。
前回は、IPでドローを持っているときはセミブラフを遅らせてSPRをできるだけ高く保つべきであるということを学びましたが、トーナメントでのこのような特殊な状況下においてはその指針は役に立ちません。先にオールインすることの方が重要です。
例えばトーナメントの終盤で、フロップでストレートドローを拾ったとします。もしも相手がOOPからベットしてきて、レイズオールインするのにちょうど良いスタックサイズを持っていたとします。この場面では、コールはあり得ません。フォールドするかレイズオールインするかの2択です。オールインする場合は、相手に対してとてつもないプレッシャーをかけます(例えば相手が自分と同じくらいのスタックで、お互いトーナメントを生き残ろうと必死な場面)。一方、ディープスタックでキャッシュゲームをプレイしている時はフロップのベットはジャストコールして、ターンでポジションを利用したプレイをするでしょう。
最終回予告
さて、本連載も次回で最終回です。最終回では、バックドアドローについて解説します。バックドアドローは滅多に完成することがないのにもかかわらず意思決定に大きな影響を与えます。それがなぜなのかを見ていきます。
著者:スティーブ・ブレイ
翻訳元の記事:Playing Draws, Part 5