連載ベットサイズ 第1回 (1/2)|トッププロがベットサイズを決めるときの思考の順序
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この連載について

ベットサイズはノーリミットホールデムの最も厄介な側面です。リミットゲームに比べてノーリミットホールデムがこれほどまでに複雑なのは、ベットサイズに制限がないことが主な原因です。私は普段ポーカーコーチとして活動しておりますが、生徒から最もよく聞かれるのはベットサイズについての質問です。「このスポットでベットすべきなのはわかるんですけど、いくらベットしたらいいのかわかりません。」という具合です。

今回の連載では、ベットサイズについて1から100まで事細かに説明するのではなく、重要なポイントに絞って解説していきます。適切なベットサイズを決める上で最も大切なことは、目的志向であることです。まずはじめに、何を達成するためにベットするのかをしっかり理解してなくてはなりません。次に、相手はどんなプレイヤーなのかを理解することです。ここまで来れば適切なベットサイズというのは自ずと見えてくるでしょう。

目的志向のベットサイズ

例えば、BNにいる自分のところまでフォールドでまわってきた場面を考えてみましょう。J7sのような最高とは言えないけど完全な屑手でもないようなハンドを持っているとします。ブラインドにいるプレイヤーは2人ともタイトですが、アグレッシブでもあります。フォールド頻度は高いですが、フォールドしない時は3ベットを打ってくるのでこちらはフォールドせざるを得ないとします。しかし、だからと言ってブラインドスチールを諦めたくはありません。このスポットでは、ブラインドをスチールできる最小の額にレイズするのが良いでしょう。そうすることで3ベットされたときの損失を最小に保ったままブラインドをスチールすることができるのです。

『From Vietnam to Vegas(D&B Publishing;日本語未訳)』の中で紹介されているクィ・グウェンの戦略をみてみると、彼のレイズサイズはほぼ例外なく2.5bb以下であることがわかります。相手が相当タイトなプレイヤーだったので、弱いハンドでもレイズしてブラインドとアンティをできるだけたくさんスチールしつつ、3ベットされたときには最小のコストで弱いハンドをフォールドできるのです。

弾力のないレンジとは

別のスポットを見てみましょう。今回は$1/2のキャッシュゲームでCOにいて、AJoを持っているとします。左のプレイヤーたちは皆、本物のコーリングステーションです。フロップを見たいと思ったらサイズは気にせずなんでもコールしてくるようなプレイヤーです。経済学の言葉を借りれば、彼らのレンジは弾力がないといえます(※訳注:経済学ではある変数の変化率ともう1つの変数の変化率の比を弾力性といいます。例えばAとBという変数がある場合、AのB弾力性とは「Aが Bの変化にどれほど敏感か」に言い換えることができるでしょう。Bが少し変化することでAが大きく影響を受ける場合「弾力がある」と言えますし、逆にBがいくら変化してもAに影響がない場合「弾力がない」と言えます。)。 そして彼らはモンスターハンド以外では3ベットしません。このタイプのプレイヤーに対しては、大きくレイズするのが良いでしょう。$10(5bb)くらいが良いでしょう。$15(7.5bb)でもいいかもしれません。だって相手はコールするのが好きだし、得意なんだから。相手のコールレンジには、 AT, Axs, KJs など、こちらがドミネイトしているハンドも多く含まれていることでしょう。そしてごく稀に3ベットが返ってきたら、さっさとフォールドするまでです。

こちらのベットサイズがいくらであろうと相手のレンジが変わらないことを「弾力がない」と表現しましたが、もちろんそれにも限度があります。例えばAAで100bbのオープンオールインをしたら、多くの場合コールしてもらえないでしょう。それでも、意外かもしれませんが、中にはコールしてくれるプレイヤーもいます。この手のプレイヤーは、「プリフロップでAAを100bbでオープンオールインするなんてことがあるのだろうか」と考えはじめます。そしてそのうちの何人かはこちらの怪しすぎる動きに我慢できずに88のようなハンドでコールしてくれるのです。もしくは、QJsのようなお気に入りのハンドで「このハンドをフォールドするわけにはいかない」と言ってコールしてくれることもあるでしょう。テーブルによっては、このようなコールをしてくれるクレイジーなプレイヤーが何人かいて、AAをオープンオールインすることが結果的に最適なプレイになることもあるのです。生計を立てるためにポーカーを勉強している我々からしたら信じられないプレイではありますが。

利益を最大化し損失を最小化するために「幅」を見極める

一旦これらの例外的なプレイヤーたちのことは忘れて、相手がもう少しまともなコーリングステーションだと仮定しましょう(この仮定は危険かもしれませんが)。これらのプレイヤーには「ここからここまでのベットサイズに対しては同じアクションを取る」という幅があるはずです。したがって、やるべきは相手について知っている情報(相手プレイヤーに特有な情報と同じタイプのプレイヤー一般の情報の両方)を駆使してこの幅がいくらからいくらまでなのかを突き止めることです。そして、達成したい目的によってこの幅の上限と下限を上手く使っていくのです。

簡単な例として、Cベットを打つスポットを見てみましょう。今回の相手は、1/2ポット〜ポットサイズのCBに対しては同じアクションを取るものとします。実はこの仮定はそこまで非現実的でもありません。このようなプレイヤーは結構いるのです。さて、ポットは$20だとしましょう。もしこのプレイヤーがフロップで何かしらを拾って、ターンも見たいと思ったら$10でも$20でも関係なくコールしてくれるのです。反対に、フロップで何もできなかったら、ベット額が$10でもあっても$20であってもフォールドするでしょう。
つまり、こちらはこのスポットで強いハンドを持っていれば$20をベットし(バリュー目的)、エアーのときは$10をベット(ブラフ目的)すれば良いのです。どちらのベットもしっかり目的を達成しています。そして、勝っている時にはより多くのチップを稼ぎ、負けている時は損失を最小限に抑えられることができるのです。

次回予告

もちろん、ここまで説明したことはお話したいことのほんの一部でしかありません。次回は、エクスプロイトされないためのベットサイズについてお話しします。加えて、スタックサイズや先のストリートを考慮したポットコントロールについても解説していきます。それではまた次回お会いしましょう!

 

 

著者:スティーブ・ブレイ
翻訳元の記事:Bet Sizing - Part 1

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